ひょっとこ乱舞公式サイト


稲垣

  こんにちは。演出助手の稲垣です。

広田

  はいはい。どうぞよろしくです。

稲垣

  早速インタヴューを始めたいんですけど、えっ? 解散しないんですか、ひょっとこ乱舞?

広田

  ええ、しません。

稲垣

  しないんですか?

広田

  ……何だよ? え!? 解散しろってか? 死ねってか?

稲垣

  いや、死ねとは言ってないですけど、だって「大爆破」とか言うから……。

広田

  そうだよ「大爆破」だよ! 少なくとも今後「ひょっとこ乱舞」て名前で公演打つことはもう無いよ! 
  でも、これを機に劇団員が辞めるわけでもないし、俺も活動を休止するつもりなんかないからなっ!

稲垣

  え、じゃあ、普通に続けていく、という……?

広田

  続けちゃ悪いのかよっ! 辞めろってか? 死ねってか? 爆発しろってか?

稲垣

  いや、別に……。まあ、爆発しろとはちょっと思ってますけど……。

広田

  思ってるんじゃないか!

稲垣

  あんたがそう言ったからだろうがっ!

広田

  ……そうなんだよねえ。

稲垣

  うん……。あれ? そうですよ。

広田

  それはまあ紛らわしかったよねえ。すみませんでしたねえ……。

稲垣

  いやいや……。え、じゃ、結局なんなんですか「大爆破」って?

広田

  ちょっと落ち着いて話しましょうか。

稲垣

  最初っからそうしてくださいよ。

広田

  ええっと「大爆破」というのはですね、一つのプロジェクトの終わり、てことです。自分たちの活動
  に言葉で一つ区切りをつけたいな、と思いまして。

稲垣

  はあ。

広田

  うちの劇団はメンバーがだんだんと変わっていったから、なんか気がつかないうちに終わっていた
  ものが沢山あったような気がしていて。その名づけ得ぬ「終っていたもの」を葬る行為をしたいな、と。
  それが「大爆破」です。

稲垣

  なるほど。これを機に構成メンバーが変わったりするんですか?

広田

  それも考えてない。というか、むしろメンバーはここ数年ですでに大幅に変わってきてしまったと
  思っていまして。

稲垣

  はいはい。

広田

  制作トップやら、何人も俳優が抜けたりとかがあって、ある意味では俺にとってここ数年はもはや
  「ひょっとこ乱舞」以後の「ひょっとこ乱舞」をやっていたような感覚があるんです。

稲垣

  確かにメンバーは大きく変わっていますね。それで一区切りつけたいと?

広田

  ですね。今まで「劇団」という形を継続していく為にあれこれ無理な工夫をしてきた部分もあったと
  思うんです。たとえて言えば 「スラムダンク」に「佐々木小次郎」をなんとか登場させてやろう、みたいな
  ことをしてきたんじゃないかと。でもすでに登場人物は変わってるわけだから、一旦「スラムダンク」には
  ケリをつけて「バガボンド」の連載を始めりゃいいじゃないか、と、そういうことを考えたんです。

稲垣

  「ひょっとこ乱舞」という「作品」を打ち切って、新連載を始める、と?

広田

  そういうことです。

稲垣

  そのための最終回スペシャル、というが「大爆破」なわけですね?

広田

  あー、そうそう。うまくまとめて頂きまして(笑)。



稲垣

  どうしてこのタイミングで「大爆破」をしようと思ったんですか?

広田

  ただの気分転換……、っていったらあまりに軽いかもしれないですけど、最初は単に名前を変えるって
 ことを俺が言い出し まして。

稲垣

  ほうほう?

広田

  それはここ数年「ひょっとこ乱舞」ていうカンパニー名を海外の方に説明することが何度かあったんで
  すけど、まあね……ちっともニュアンスが伝わらない(笑) 

稲垣

  でしょうね(笑)。

広田

  で、名前を変えようっていってメンバーといろいろ話してたんだけど、なんだか俺は何かにけじめを
 つけたがってるな、ってことを思いまして。じゃあいっそ「大爆破」にしようという話になったんです。

稲垣

  「けじめ」ですか。

広田

  今まで自分には「ポシャッたことなんて一つも認めないぞ」みたいな意地があってずっとやってきたと
  思うんですよ。だけど、 そんな意地を張る必要は全然なくて、ある意味では継続不可能になったことは
  確かにあったわけで、それをそろそろ認めてもいいんじゃないかと思って。

稲垣

  どういったことが継続不能になったんですか?

広田

  えーと……例えばですね、今や旗揚げメンバーは三々五々、それぞれの場所に去っていってしまった
  わけですよ。ソンハや  伊東沙保、金子優子なんて俳優は今でも活動を続けているからある種の「卒業」みたいな
  感じもあるけど、それ以外に芝居自体を  辞めてしまった連中てのが大勢いて、いろんな奴が「演劇をやっている
  場合じゃない」ていう場面にぶちあたって、それがいいとか  悪いとかは別にして、事実として辞めていった。
  ありふれた話です。極めてありふれた話なんだけど、でも、俺はそのことを認めた くなかったんでしょうね。
  そいつらに芝居を続けさせてやることが出来なかった、なんていう言い方がそもそもセンチメンタルすぎる
  というのはよくわかっているんだけど、でもやっぱり個人の感慨としては劇団の中で維持・継続しようと思って
  果たせなかった思いというのがやっぱりあって。で、それをなかなか認めることが出来なかったんですな、
  自分自身に対して。

稲垣

  それを何故、いまは認められるようになったんでしょう?

広田

  それは意識が変わったからじゃないかな? わかんないけど。なんか今の意識としては、ひょっとこ乱舞を
  作った当初に考えていた場所とはまた違う場所に行きたくなった、というかね。そういう新しい欲望が湧いてきたから、
  それに対して新しい名前をつけたいと思ってるんです。

稲垣

  新しい欲望? というのはそれは「劇団」というものへの考え方が変わってきたということなんですかね?

広田

  ですね。

稲垣

  どう変わった?

広田

  うーん。もともとは劇団て、固定メンバーのバンドみたいなものをイメージして結成したんだよね俺は。
 だけど、今はもうちょっと違う、通りすぎる場所みたいな、変化しながら維持されるシステムみたいな、
 そういうものをイメージしています。

稲垣

  固定的なものと、流動的なものの違い?

広田

  そんな感じかな。でもそれだけじゃないな、んー……。

稲垣

  なんでしょう?

広田

  ……最初、「ひょっとこ乱舞」を旗揚げした時には俺の作るものがどんなものなのか、っていう、うちの
  劇団のカラーみたいなものは何もわからなかったわけじゃない?だってその時点では作品がまだ無いわけだからさ。

稲垣

  はいはい。

広田

  だからこそお互いがお互いを必要としていたと言うか、「このメンバーが集まっている」ていう人のつながりが
  重要だった、というかそれが劇団のすべてだったと思うんだよ。だけど今は一応10年やったからこのカンパニーで
  作ってきた作品とか、方法論とか方向性、まあ大きく言えば「歴史」があるわけだよ。短いながらもさ。

稲垣

  ええ、ええ。

広田

  しかもね、それは単に劇団内部での了解事項ではなくて、お客様を巻き込んで広がっている理解だと
  思うんだよ。「ひょっとこ乱舞」はこういう劇団だよな、ていうイメージというかさ。それは結成当時には絶対に
  なかった条件で、今、俺が新しいプロジェクトを始める時にはそこが起点になるんじゃないかと思ってる。

稲垣

  というと、今後はじゃあ、劇団のカラーみたいなものを今以上に大切にしていくという意味なんですかね?

広田

  うーん。ちょっと違うかな。カラーは作品によっていろいろ変わってもいいと思うから。だからまあ、歴史だよね。
  俺たちがどんな道を通って、何に失敗して、何に成功してっていう、お客様の中の記憶が大事なんだと思う。
  もちろんそんなもの全然知らない人の方が圧倒的に多いと思うんだけど、でも、そういう観客席との呼吸をずっとして
  きたという時間の積み重ね、それを出発点にして新しい何かを始めたいと思っている。



稲垣

  それは見方を変えれば、今までより劇団員にはこだわらないということなんですか?

広田

  固有のメンバーにはこだわらない。ただ、俳優たちとの継続的な時間は重要だと思ってるし、やっぱ
  長い期間一緒にやんなきゃ話にならないという意識はありますね。

稲垣

  継続的な活動にはまだまだ可能性があると?

広田

  むしろそこにしか可能性を感じない。

稲垣

  そこにしか? ちょっと極端な言い方ですが、それはなぜそう思うんですか?

広田

  うーん、なぜ? ……というとまあ、これはカンになっちゃうんですけど、プロデュース形式でやる芝居って
  結局、怖くないなと感じていて。

稲垣

  怖くない?

広田

  もちろんプロデュースだろうが、いい作品だと思うことはあるし、感動する作品もたくさんあるんだけど、
  なんか怖くない。やっぱり舞台上を観てて「なんだこれは……!」ってなるのはいつでもカンパニーの力を
  見せつけられた作品だったんだよ。俳優だって継続的な関係性の中で活動している時にこそ、何か通常では
  ありえないような地点に辿り着くことが出来ると思うんだよね。

稲垣

  それはちょっとわかる気もしますね。

広田

  別に「劇団」という形が絶対なんていうつもりはないけど、人と人が最初に出会った「化学反応」なんて
  究極的には信じてないんだよ俺は。そんなもんたかが知れてんだろうって。

稲垣

  たかが知れてますか?

広田

  知れてるよ。とかいって、自分だってプロデュース形式で作品を作ることはあるし、今後もたくさん出会いを
  重ねていくと思うんだよ。初対面の方がお互い新鮮さもあるし、なにより圧倒的に楽しいことは間違いない(笑)。

稲垣

  はいはい(笑) 長くなってくるといろいろとね。

広田

  でもホントに面白いのは熟年夫婦じゃないけどさ、もうお互いに新情報なんかほとんどない。話すことなんか
  何もない、むしろ顔も見たくない、みたいになった、その後だと思うんだよ。もうすごい作品でも作るぐらいしか
  俺たち一緒にやることないぞ、ていうさ。お互いの能力に対して「すごーい!」なんて言う必要が全くなくなった
  あとで、ホントに「その先」の創作が始まるんじゃないかと思うんだよ。

稲垣

  じゃあ今後はそういう集団を目指していくと?

広田

  少なくともその受け皿たりうる集団を目指したいね。あのね、こないだ劇団の根岸と話していたんだけど、
  近頃の小劇場シーンが劣化AKB的なふれあいの連鎖、お友達発表会の見せ合いに堕しているんじゃないか
  っていう危機感を彼女は持っていてね、

稲垣

  ああ、なんかわかる気もしますね。

広田

  そういう危機感は俺もとても分かるのよ。と思って。twitterとかSNSみたいなものが大いに発展してく中で
  ますますそういう「舞台上の人間の素人化」てのは進んでいくと思うんだよ。それ自体は別に構わないんだよ。
  というか、そういうもんだと思っているんだけども、でもやっぱり作品としてのすごさというかさ、怖さ、そう、怖いな、
  って思うようなものを観たいわけだし、そういうものが作りたいわけじゃないか、やってるからにはさ。

稲垣

  素人がぽっと作れるようなレベルのものではなく、ということですね。

広田

  だから継続的な活動を通じてしか到達できない場所ってのがあるんだよ。俺はそっちに賭けたいね。

稲垣

  では演劇を続けている限り「劇団」という制度にはこだわっていく?

広田

  とりあえず今はそれ以上にぜいたくで「怖い」方法はないと思ってますね。だからフリーの俳優さんてのも、
  そういう「場」を見つけた方が長い目で見たら絶対得だと思うんだよね俺は。



稲垣

  じゃ、最後に2つほど確認したいんですが、

広田

  なんでしょう?

稲垣

  一つは、具体的に劇団員の今後の活動はどうなっていくのか? もう一つは、改めてひょっとこ乱舞の第25回は
  どんな公演になるのか?

広田

  えーと、今後の活動については秘密(笑)。

稲垣

  秘密って……。

広田

  どういう形の再出発になるのかはまあ、大爆破を経てみなければわからないよね。

稲垣

  じゃあ次回公演の内容は? やっぱり「大爆破」であることと関係してくるんですか?

広田

  それは全然ないと思う。単に新作公演として『うれしい悲鳴』という作品は独立して作る。ま、客演さんも多いから
  自然とそういう雰囲気になると思うし。いろいろやりたいことも溜まってきているしね。

稲垣

  では、それはまた改めてのインタヴューで(笑)

広田

  ですね(笑) そんじゃお後がよろしいようで。

稲垣

  長文、読んでいただきましてありがとうございましたー。

広田

  ありがとうございましたー。